ペンギンが増えた気がするので数えてみた。インディーゲームにおける“ペンギンブーム”の可能性を追う

しわしわしわしわ·
コラム

皆様、ペンギンはお好きだろうか。筆者は好きだ。丸っこいフォルムとふかふかのお腹、よちよちとした覚束ない足取り――ちょっぴりまぬけで平和的なイメージがあり、見ているだけでほっこりと心を和ませてくれる。水族館での活躍ぶりを見れば、彼らに魅了されている人は決して少なくはないことが分かるだろう。

そんなペンギンは、もちろんゲームの題材として扱われることもあるのだが……なんだか最近、目にすることが増えた気がする。

2026年7月14日に発売され、先日弊誌でもご紹介した『Penguin Lifter』や、同年10月に発売が決定しにわかに話題となっている『ペンギン・コロニー』は、どちらもペンギンを扱うインディーホラーゲームだ。さらに同年2月20日、ペンギンをタイトルに冠した『ペンギンウォーズ』というテキストADVも発売されている。そのほか、ざっと思い返せる範囲でも、ペンギンが登場するインディーゲームはいくつもある。

▲『Penguin Lifter』

……もしかして、筆者の知らないあいだに、空前のペンギンブームが到来していたのだろうか? しかし、直近でペンギンものを目にすることがたまたま続いたために、ブームのように感じているだけかもしれない。はたして、本当にペンギンブームが到来しているのか、その可能性を追いかけてみようと思う。

2026年、本当にペンギンブームがきているのか?

まず、本稿執筆時点8月末までの範囲で、年内にどれだけペンギンのゲームが発売されていたかを確かめておく必要があるだろう。冒頭でも述べた3作のペンギンインディーゲームを中心に、改めて軽く紹介していこうと思う。

7月14日に発売された『Penguin Lifter』は、タイトルのとおり、“ペンギンリフター”として「倒れているペンギンを起こしてあげるだけ」の奇妙な業務をこなしていく、サバイバル・ホラーゲームだ。これがどう“恐怖”に繋がっていくのか、詳しくはこちらの記事で確認していただきたい。そして、10月9日に発売予定の『ペンギン・コロニー』は、南極に住むペンギンとなって狂気に堕ちていく人間を観察する、クトゥルフ神話をリスペクトしたコズミックホラーなウォーキングシミュレーターである。こちらは現在、Steamにて体験版が配信中だ。

▲『ペンギン・コロニー』

どちらも独自の色が強く、決して内容が似通っているわけではないのだが、“ペンギン”という題材だけが一致している点が印象に残った。南極や北極という、人間にとっては未知で過酷な環境は、ホラーとの取り合わせがよいのだろうか。そこで主に登場するのがペンギンであることも、そのキャッチーさを思えば納得できる。肉食獣と比べて攻撃的な印象がないし、恐怖対象をブレさせることもないだろう。

ペンギンという親しみやすくかわいらしい動物を取り入れることで、ホラーシーンとのギャップを大きく煽ることも、プレイヤーに息抜きを提供することもできる。南極という“一面まっしろ”なイメージのある舞台では、ホラーに必要不可欠な緩急の“緩”の部分を、ペンギンが一身に担ってくれるのかもしれない。

では、特別にホラーというジャンルのみ現在ペンギンブームがきているのかというと、どうやらそうでもなさそうである。同年2月20日に発売された『ペンギンウォーズ』は、地球が滅亡するまでの一週間をどう過ごすかという探索型テキストADVだ。ストアの画像では世界滅亡の原因となる「ペンギン流星群」がニュースで紹介される様子や、河川敷に佇みジッとこちらを見つめるペンギンの姿がはっきりと確認できる。

▲「話しかける」……?

2月14日には、北極で雪の下を掘り進めて鉱石を集め、家具や雑貨などを作成してペンギンに売りさばいていく穴掘り&経営シム『Arctic Digger TCG Collection』が発売。6月4日には“ペンギン強盗団”となって遊ぶシュールなCo-op型TPS『The Greatest Penguin Heist of All Time』が正式リリースされている。さらに直近、8月20日に発売されたばかりの『PengPong ペンポン』は、ペンギンを操作してピンボールで戦う物理演算シューティング・ローグライトアクションゲームである。

これだけでも、ペンギンはありとあらゆるジャンルに出没し、非常にマルチな活躍を見せていることが伝わるだろう。もはや、未だペンギンが登場していないジャンルを探すほうがむずかしいのではないかとすら感じる。

▲『PengPong ペンポン』

2026年には本稿執筆の8月末現在まで、少なくとも6本のペンギンゲームがインディーから発売されていたことが分かった。平均すれば、約40日に1回はペンギンと出会っていたことになる本数である。これはほとんど“ブーム”と呼んで差し支えない頻度ではないだろうか? それも特定のジャンルに限った話ではなく、さまざまなジャンルを横断してあらわれているので、「今年はペンギンのゲームが流行っているらしい」と言われれば、「確かに、なんか見かけたな」と思うユーザーは、想像していたより多いのかもしれない。それほどまでに生息域が広い。

一旦、インディーゲーム界では現在ペンギンブームがあると仮定して、一体いつから始まったものなのか? それを知るためには、2025年以前におけるペンギンの変遷を調べる必要があるだろう。

▲『Arctic Digger TCG Collection』

ペンギンは一体、いつから現れたのか

いつからインディーゲームでペンギンが扱われるようになってきたのか――その調査には今回、非公式のSteamデータベースサイト『SteamDB』を利用した。「インディー」タグとリリース年で絞り込みつつ「Penguin」で検索し、ゲームのヒット数を確認・比較していくことで、Steam上でのインディーペンギンゲームの変遷を追っていく。

注意点としては、ペンギンが“題材”といえるほど大きく扱われているかは未知のタイトルも含むこと、早期アクセスがあった場合はそちらのリリース年が優先されていることと、開発者名も検索結果に含まれてしまうことなどだ。正確な調査とは言えないが、あくまで参考と目安ということで、今回はご容赦いただきたい。

▲2021年

調査の結果、2021年の「“ペンギン”をストア内に含むゲーム」は10本、2022年はなんと0本であることが判明。この段階では、現在と比べてペンギンの注目度が低かったのだろう。ペンギンが日陰を歩いていた時代であったことがうかがえる。

2023年では15本となり、2021年と比べると、カプセル画像にはっきりとペンギンやそれに類する鳥が描かれているタイトルが増えた。以降は2024年に18本、2025年には25本と、順調に進出をはたしている。

▲2023年

特に2024年は、最大40人で競うレースと協力登山アクションが楽しめる『Faaast Penguin / ファーストペンギン』を筆頭に、南極で転倒したペンギンを助けるだけの『Penguin Helper』や、高難易度プラットフォーム『Angry Penguin』など、“非常に好評”ステータスを獲得しているタイトルが増えていたことが特徴的だった。プレイヤーにもペンギンが浸透しはじめたのはこのあたりと言えるのではないだろうか。

そして今年、2026年は8月31日現在ですでに28本。これは過去から見れば脅威のペースだ。年末までにどこまで増えるのか、非常に興味深い結果である。

この流れをまとめると、「2023年ごろひそかに顔を出したペンギンは、しっかりと地盤をかためつつ徐々にその数を増やして、2026年には無視できないほどの存在感をインディーゲーム界で放ちはじめている」ということになる。

▲『Penguin Helper』

つまり、だ。ペンギンブームはまさに今、本当に来ている。……おそらく。

ペンギンブームのわけは

しかし、「なぜペンギンブームが来ているのか」については、考察がむずかしいというのが正直なところである。

ジャンルが多岐にわたることを除いても、そもそもプレイヤーキャラクターとしてペンギンを操作するのか、はたまた人間としてペンギンと触れ合えるのかすら統一されておらず、“ペンギンならではの操作性や機能”によって重宝されているわけではないように見えた。お腹で氷上を滑る、二足歩行が覚束ないなどの特徴を取り入れた作品は実際にあるが、ペンギンを操作しない、あるいは操作キャラクターがペンギンである必要があったかはよく分からないタイトルもほとんど同じだけ存在したため、操作の独自性という一点でのブームとは考えにくいと感じる。

▲『The Greatest Penguin Heist of All Time』

かわいいものとして登場することも、恐怖の対象そのものとして登場することもある。どんくさいペンギンも、機敏に泳いで速度を競うペンギンもいる。ペンギンがどのような表情を見せるかは開発者のさじ加減やこだわり次第であり、ペンギンの立ち位置がそのままタイトルの雰囲気や方向性を定め、独自性となる――これは確かに、腕がなる題材なのかもしれない。

ちなみに、今回の調査では、もうひとつ重要なことが判明している。あの大人気かくれんぼゲーム『めっちゃカメレオン』の開発を手がけた**レモリオン氏は、過去になんと4本ものペンギンゲームを公開していた**のだ。異変のすべてにペンギン要素が含まれている8番ライク『8ペン出口』を筆頭に、うち3本がホラーゲームである。

▲異ペンを見つけたら「YES PEN」、異ペンがなければ「NO PEN」

……もしかすると、ペンギンを愛するゲーム開発者が一定数いるだけなのだろうか? 引き続き、ペンギンたちの動向に注目していきたい。


ライター:しわしわ 編集:レイリー

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